2024年の夏を振り返ると全国的に真夏日や猛暑日が連日のように続きました。また9月18日に東京と名古屋で観測史上最も遅い猛暑日を記録するなど、これまで体験したことのない厳しい残暑が長期間続きました。この、いつまでも終わらない暑さが続くというのはとても辛く、多くの方が熱中症で搬送される事態となり、熱中症対策が重要で必須の状態となってきています。来年もきっとこの厳しい暑さは続くはずで、その対策のためにも2024年の熱中症を数値と傾向で振り返り、対策を考えてみましょう。
2024年の熱中症搬送人数
総務省の発表によると5月から9月までの熱中症による救急搬送数は97,578人と平成 20 年の調査開始以降で最も多い搬送数となり、酷暑と言われた昨年の救急搬送数91,467人と比べ6,111人も増加となりました。また、9月も残暑が厳しく救急搬送数は11,503人と調査開始以降で最も多い搬送数となりました。特に静岡県や栃木県、茨城県、三重県の4地点で今年はじめて40℃超えが観測されたように、暑さが猛威を振るったエリアが増えたのが原因と考えられます。
出展:「令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」(消防庁)
(https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r6/heatstroke_nenpou_r6.pdf)を加工して作成
どの年齢層が多い?
高齢者(満65 歳以上)が最も多く55,966 人(57.4%)、次いで成人(満18 歳以上満65 歳未満)32,222 人(33.0%)、少年(満7歳以上満18 歳未満)8,787 人(9.0%)、乳幼児(生後28 日以上満7歳未満)601 人(0.6%)の順となっています。
日本は総人口のおよそ3割が高齢者で、さらに一人暮らしの高齢者が672万人(令和2年時点)おります。暑さを感じにくく室温が高温になっていても気づけずに熱中症を発症した方が多かったのではないでしょうか。
出展:「令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」(消防庁)
(https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r6/heatstroke_nenpou_r6.pdf)
発生場所はどこが多い?
住居が最も多く37,116 人(38.0%)、次いで道路18,576 人(19.0%)、公衆
(屋外)12,727 人(13.0%)、仕事場① 9,870 人(10.1%)の順となっています。
住居の発生が多い理由は3つ考えられます。
①電気代高騰でエアコンの使用をためらい室内の温度を下げられなかった
②記録的な暑さで室内の温度が上昇
③暑さを感じにくく体温調節が苦手な高齢者の増加
2024年も電気代や食費などが右肩上がりで上昇しているため出費が気になるところですよね。節約を意識しすぎて無理をすると熱中症になってしまい、治療費や入院費で出費がかさんでしまいます。熱中症警戒アラートや、真夏日・猛暑日の予報が出ている場合はエアコンをつけるといったルールを設けて早めに手を打つことが大事です。特に高齢者への配慮が必要で、室内が高温になっていることに気づかない場合があるので、温度・湿度計を設置して目に見える工夫をしたり、直接話すなどしてエアコンの使用を促して体温上昇を防ぎましょう。
出展:「令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」(消防庁)
(https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r6/heatstroke_nenpou_r6.pdf)を加工して作成
仕事場での熱中症搬送数は増加している
仕事場①(道路工事現場、工場、作業所等)での熱中症搬送数は9,870人と過去5年で最多となりました。熱中症対策が浸透している仕事場でもこの記録的な暑さでは対策が不十分なようで、熱中症の発症が後を絶たない状態です。まだ屋外での作業や道路工事現場での対策が甘い、または空調が不十分な工場や倉庫での作業がまだまだ多いため、想定以上の暑さに対応できる環境でなかったのではないかと考えられます。
出展:「令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」(消防庁)
(https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r6/heatstroke_nenpou_r6.pdf)を加工して作成
私たちができる熱中症対策のポイントとは?
熱中症を引き起こすと重症化したり最悪の場合亡くなるケースもあります。熱中症対策のポイントは、無理せずスマートに熱中症リスクを下げることです。
A.エアコンを徹底的に使いきる
例えば7月になったら躊躇せずにエアコンを使うと決め、そのかわりロスを無くす、効率を高めることを徹底的に考えてみましょう。
- 冷気の循環はもちろん、作業場の断熱を高めるべく壁や床材を見直してみる。
- 日光の入りもしっかりコントロールするだけでなく、室外機の風通しを良くしエアコン自体の効率も上げる。
- 外壁や屋根に放射冷却機能を持たせ、放射熱を減らし体感温度を下げる技術もあります。
B.高齢者の見守りをDX化
高齢化はおさまらず2042年にはピークを迎え約3,880万人になる見込みで、高齢者の発症も増加していくとみられます。高齢者への声掛けはもちろん、IoTを活用したエアコンやスマートリモコンの採用で遠隔からでも見守りができるようDX化しましょう。
C.Web上の豊富な熱中症対策情報を得る
「熱中症」とWeb検索すると民間だけでなく厚生労働省や気象庁、消防庁などの関係省庁のWebサイトが見つかります。熱中症のメカニズムや対策方法、熱中症搬送人数など様々な情報をスマートホンで集めることができ、スマートに熱中症対策の知識を深められます。
職場では熱中症のメカニズムや対策について教育を実施し、一人ひとりの理解を深めることで本人や仲間の熱中症を防ぐことができます。私たちは企業の安全対策担当者・現場監督者・現場作業者へ向けた熱中症予防セミナーを実施しております。ご興味ございましたらぜひお問い合わせください。